認知症になると「これまで使えていた法的枠組みが使いにくくなる」ことがあります

多くの契約や手続は、「本人が内容を理解し、自分の意思で法律行為ができること」を前提に組み立てられています。

認知症などで判断能力が低下・喪失すると、この前提が成り立たなくなり、預貯金の出し入れや各種契約など、利用できる法的な枠組みや手続に制約がかかることがあります。

たとえば、判断能力の低下が金融機関に認識されると、ご本人の財産を保護する目的から、預金の引き出しや解約などの取引が制限され、生活費や医療費の支払いに支障が生じる場合があります(いわゆる「口座凍結」)。

また、判断能力を欠いた状態で行った契約は、民法上「無効」とされる可能性がありますが、後から当時の意思能力の欠如を医療記録などで立証することは容易ではなく、結果として紛争が長期化してしまうケースも少なくありません。

判断能力が低下した後の権利保護のためには成年後見制度が用意されていますが、財産管理や重要な契約行為は後見人の権限のもとで行われることになり、家庭裁判所への定期的な報告や、後見人報酬などの負担が継続的に生じます。

ここで重要になるのが、任意後見契約や家族信託といった「事前に設計する」法的な仕組みは、原則として本人に契約内容を理解できる一定の判断能力があることが成立要件だという点です。

判断能力がしっかりしているうちに準備をしておかなければ、その後に選べる法的な枠組みは大きく限定されてしまう――。

ここに、見落とされがちな分岐点があります。

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